死化粧に寄せる想い

人の一生において絶対と言えるもの・・・それは『死』だけではないでしょうか。

 

看護師になって、実に多くの方々の最期に立ち会わせていただきました。

最期を迎えるその瞬間までの、その方の生き様を見届ける事は、看護師の大切な役割のひとつだと思っています。

 

そして亡くなられた後の『エンゼルケア』と呼ばれる死後の処置を行わせていただく事も看護師の大切な役割です。

 

私には、エンゼルケアの際の『エンゼルメイク(=死化粧)』での苦い思い出があります。

 

その方は末期癌で、病院で最期を迎えられました。闘病中は個室でお嬢様が付きっきりで看病されていました。ご本人も死期を悟っており、「最期の時はこれを着せてね」と、大好きでよくお召しになっていたという大島紬を用意されていました。

 

エンゼルケアの後、着付けも終え、最後の紅をさし、お嬢様にお会いいただいた時に、お嬢様が「いつもの母とイメージが違う」と仰ったのです。

 

その原因は・・・口紅の色でした。

 

最期までその人らしさを大切に、と看護にあたっていたつもりでした。それなのに死化粧の口紅の色をお伺いするのを失念してしまったのです。

 

直ぐに口紅を塗り直して、「あ、いつもの母になった」と言っていただきましたが、私の中では悔やんでも悔やみきれない失敗でした。

 

それ以来、エンゼルケアの時は可能な限りご家族にも一緒にケアをしていただき、最後の紅はご家族にさしていただくことにしています。

 

在宅の現場では、お孫さんまでご一緒にエンゼルケアを行ない、ご本人への労いとお別れをしていただきます。

 

これまで凛で看取らせていただいた方々は、みなさん眠っているように安らかなお顔をされていました。看取ったご家族にとって、ご本人が安らかなお顔をされていることは、辛さと寂しさの中で唯一の救いになるのではないでしょうか。

 

『死』が誰にとっても必然である以上、ご本人もご家族もできる限り悔いのない選択をしていただけるように、そして、最期までその人らしくいていただけるように、これからも支えていきたいと思います。

 

訪問看護ステーション凛 

所長 野上 陽子

 

コメント: 4
  • #4

    野上陽子 (土曜日, 21 1月 2017 17:15)

    私は長生きして頑張る予定です。
    しかし、私より若い方の看取りはあんまりしたくありません(苦笑)

    お迎えが来るその日まで、自分らしく精一杯頑張りましょうね❣️
    清水さんの生きて頑張る姿をちゃんと見守りますからね❣️

  • #3

    しみずさちよ (土曜日, 21 1月 2017 14:57)

    エンゼルケア。祖父の時も祖父母の時も生きているみたいで涙がとまりませんでした。

    私の最後は、どうなるのでしょう。。。
    まだ、かなり先とは思いますが、野上さんに長生きして頂きほどこしていただきたいです。

  • #2

    野上陽子 (水曜日, 18 1月 2017 21:47)

    誰もが避けて通れない道ではありますが、お迎えの日が来るまで、利用者さま皆様が、笑顔でその人らしく暮らせることがご家族の皆様と私達の一番の願いですね!

  • #1

    小林京子 (水曜日, 18 1月 2017 19:57)

    いつもお世話になっております‼
    生き物は全てにおき、死だけは絶体ですね�
    悲しい、怖い、、
    看護師さんは、最後までを看とるお仕事、とても大変です。
    子供頃は白衣の天使と思い憧れた時期もありましたが、とてもとても私には勤まりませんでさた。
    たくさんの思いを胸に寄り添って頂いて下さってる事に感謝いたします。
    これからもよろしくお願いいたします❗